みなさま 田中かつゑです。保護ネコ集団の我が家のニャンコたちは当然親猫から生きる為の教育を受ける前に命の灯が消えかかる体験をし、その後我が家に来ています。そのため、猫じゃらしで遊ぶことはあっても、狩りは出来ません。多分生きている魚を見たとしたら、怯えて逃げちゃうことでしょう。後天的な教育は本当に大事なんですね。
先日ハイキングに行った時の事です。5時間程の登山道を楽しみ、帰路につくため乗った電車はやや混雑しておりました。多数のハイカーが私たちと同じように大きなリュックを抱え座席に座っています。私は同行者と一緒に座りたかったのですが、その余裕は見当たりませんでした。
と、男女二人組のパーティーが席を詰めて下さり、私たちもやれやれと腰を下ろすことができたのです。お礼を言いつつ、親切な方たちだな、と思いそれとなく彼らを見ていると、どうやらお二人はお付き合いし始めのご様子で、初々しい雰囲気を醸し出しています。お二人とも恐らく60歳前後位でしょうか。一緒の時間を過ごすのがとても嬉しそう。わぁ、いい感じだなぁ。この雰囲気に囲まれると、私たちまで嬉しくなっちゃうなぁと思っておりました。
そうこうしていると、女性が私に「XX山に登られたのですか?」と話しかけてくれました。
ん?何故XX山?私たちが電車に乗った駅からは、XX山までは相当の距離があります。不思議に思っていると、
「私たちも今日はXX山に行ったんです。でも、私が夏山に登るのが初めてで疲れてしまって。」
男性が続けます。「本当はA駅(私たちが乗車した駅です)まで頑張る予定だったけど変更して最短コースにしたんですよ。」
そうだったのですね。もしかしたら彼女は彼の提案通りに完走できなかったことを心苦しく思っているのかもしれません。そこで思わず私たちが(彼女たちが予定していたルートを)完走できたのか確かめたくなったのかもしれませんね。
そこから、お互いに登ってきた山の話になったのですが、どうも様子がおかしいのです。彼女の方があまりにも近辺の山に関する情報を持ち合わせておらず、彼がそれを補うかのように会話内容を逐一彼女に説明しています。
あれっ?もしかすると『夏山』が初めてではなくて『ハイキング』が初めて?そう思い彼女の服装をそれとなく観察すると、わかりました。リュック・服・帽子・靴。いずれも新品です。しかも彼が身に付けているものと同じメーカー製のもの。おそらく彼に誘われるがまま、初めてのハイキングだったのでしょう。それはお疲れでしょう。大変でしたね。
完走できなかった彼女の申し訳なさそうな表情を汲んだのか男性は続けます。
「ちょっと心残りなんだね。じゃあ、今ならまだ時間が早いからYY駅で降りて温泉に寄り道しようか。あなた、温泉好きでしょ。」
「うわぁ、嬉しい。でも着替えが。」
「ああ、汗かいたからね。新しい洋服を買ってあげるよ。」
冷房が効いているはずの電車内が暑いです!お二人、私たちが目に入っていません。そろそろ寝たふりでもしたほうがいいのでしょうか…と勝手に照れていると、また彼女が私に話しかけてきます。
「素敵な山の情報を教えて頂いてありがとうございます。次の機会に登ってみます。」
わあ、とろけるような笑顔。穏やかな口調と柔らかな物腰。自分たちの心が満たされていると周りの人たちにも幸せオーラが伝染するんだな、と思いました。
YY駅が近づいてきます。
「では、私たちは予定変更で温泉に行ってまいります。」と彼。
「素敵ですね。いってらっしゃいませ。」と私。
ここでお二人とはお別れです。さて、私たちも電車を乗換え帰路につきます。歩き疲れも手伝い、うとうとしかかった時、同行者が言いました。
「10代のカップルみたいな雰囲気だったね。」
そうですね。幸せそうでとても良かったですよ。
あの方たちがご自分の幸せを廻りの方々に振りまいてくださったので、私たちもご相伴に預かり、ウキウキした気持ちになっています。幸せを自覚することは自分自身だけでなく、自分の周りをも巻き込んで大きな幸せを作っていく事の小さな一歩なのかもしれないな。
そういえばニャンコも私が笑うと一緒に笑ってくれるな(ホントですよ)と思ったりもしました。