役員メッセージ 素敵な方々

かつ便りNo.116 ~寒くても心はあったかい~

 

 みなさま 田中かつゑです。「三毛猫はツンデレですよ。」これはお世話になっている獣医さんの言葉なのですが、我が家の三毛もご多分に漏れずツンデレ。抱っこ嫌い、撫でるのも一苦労。だけど、彼女は私が出かける時は必ず出窓から見送ってくれるのです。決して監視しているんじゃないよ…ね?

 先日ある地方に出かけた時、路線バスを利用したのですが、ちょっとほっこりする事があったのでお知らせです。

そのバスはこんなシステムでした。

  • 乗客はバスの中央にある扉から乗車し(中乗り)、運転席のある前方から降車(前降り)します。
  • 乗客は降車時に運賃を運転席の脇に設置されている運賃箱に支払います。
  • バス料金は乗車距離に比例するため、乗客は乗車時にそのバス停の目印となる整理券を発券機から受け取ります。
  • 始発バス停乗時には整理券は発行されず、途中のバス停から乗車した人でも、整理券を持っていない乗客は始発バス停からの乗車とみなされます。

 私が乗ろうとしたのは始発バス停で10名程の列ができていました。そこにお年を召したご夫婦が現れたので、誰からともなくそのご夫婦を列の先頭へと誘いました。待つことしばし。バスが来たのですが、奥さまがおもむろに、小銭をお財布から取り出したのです。おそらく料金先払いのバスと勘違いしたのだろうと思い、誰かが「後払いですよ」と声掛けをしました。奥さまはその声でこのバスのシステムを理解したのか、今度は発券機を触り始めます。「整理券が出ないの」と悲しそう。またどなたかが、「始発バス停は発券されませんよ。」と助け船。お二人はバスの乗り方をご理解なさった様でした。

そしてバスのステップを登りますが、奥さまにはこの3段の階段が辛いご様子で、1段1段やっと、という感じで登っていきます。多分バスの中にたどり着くまで数分かかったと思います。次はご主人です。彼は杖をお持ちでした。当然やはり乗車にお時間が掛かります。お二人が車内に入られたら、今度はお席の確保です。始発なので、どの場所も空いているのですが、手すりにつかまりながらの着席なので、また時間がかかります。ですが、列で待っていた10人以上の方々は、誰一人文句を言うことなく、このご夫婦がしっかり着席をするまで、バスに乗車することなく外で待っていたのです。

その日は風が強めで気温も低く、普通だったら一刻も早く温かい車内に入りたいと思う様な状況でした。お待ちの方々の中には両手に大きな荷物を抱えていらっしゃる方、幼稚園くらいのお子様をお連れの方、薄着で寒そうな方もいらっしゃいます。みなさま、色々な思いと共に最長20分もの間バスを待っていたのでしょう。そこにお年を召したご夫妻がいらした途端、「どうぞ」と列の一番前を開け、バスのシステムが把握できないご夫婦を助け、お二人が安全に着席するまで、外で待ち続けたのです。

 その後も感動は続きます。誰彼ともなく座りやすい席を他の人にさりげなく譲り、(COVID-19感染防止のため)お互いに少々離れて座り、みなさま寡黙にしてらっしゃる。運転手さんはバス停を発車する度に「よろしいですか、発車いたします」と優しくお声がけしてくださる。降りる方がいらっしゃると滑らかにバスを停車させ、「お忘れ物がございませんよう」とまた、お声がけくださる。ただの路線バスなのに何か温かい空気に包まれ、非常に乗り心地が良いのです。

 あまりのほんわかとした雰囲気につつまれ、私は危うく降りるべきバス停を通り過ぎるところでした。少しの気遣いと思いやりでこんなにも豊かな気持ちを味わえるんだなと、ついでにこの土地も大好きになりました。