役員メッセージ 素敵な方々

かつ便りNo.120 ~まだヒヨッコ~

 

 みなさま 田中かつゑです。猫のご飯はみんな同じものをあげているのですが、一匹だけお腹が緩い仔がいます。その仔はとても偉くって、トイレの後「おかあしゃん、トイレなの。片付けてなの。」と知らせてくれます。我が家はニャンコトイレをアクリル板で囲ってあるのですが、その板をカリカリカリ…と引っ掻き始めるのです。はいっ、ただ今お片付けさせて頂きます。わたくし、しもべでございます。

 若い頃、とてもお世話になった人生の先輩がおります。私よりも20歳近くお年を召している彼は、いつも楽しいことを見つけようとアンテナを高くしている様に見受けられます。正直すごいなぁと感嘆しております。

 彼は特に「食」に関する興味が半端なく強い方です。もちろん料理の腕もピカイチ。私も何度もごちそうになりましたが、隠し味の利かせ方が素晴らしく、いくつかのレシピを教えて頂いたこともあります。その腕を活かし、つい最近までイタリアン、おばんざい、ラーメン、餃子とまるで嗜好が異なる飲食店を何件も経営しておりました。

 私が素直にすごいなぁと思うのは、彼のこんな所です。

  1. 彼独特のレシピを雇用したシェフに教え、公開。該当シェフが独立する時はそのサポートを実施。
  2. 「美味しいものが好き」に留まらず、その美味しさを「手軽に作れる万人好みの味」に仕立てることで、従業員の料理の腕に関係なく安定した(美味しい)味をお客様にご提供。
  3. 異なる種類の飲食業を展開することで、多種多様な材料を仕入れ、それらを新メニュー開発に活用。
  4. お店の経理・総務仕事を人任せにせず、ご自身で担当。これにより適正な原価の設定と設備投資を持続させる。
  5. 飲食店での困り事=残飯処理の解決に取り組み、生ごみ処理機を発明。特許取得。(ある企業と商品化の手前までお話が進んだそうです)

文字通り、「好きを仕事に」してしまい、その技術を周りに広げ、自分自身もビジネスの幅を広げていく。そんな彼は人に弱みを見せません。ご自身で事業を立ち上げ、何件もレストランを経営なさっている関係上、おそらく何らかのアクシデントやトラブルは発生したと推測するのですが(ずいぶんと前に「信用していた従業員に有り金持っていかれたよ」と明るく(?)愚痴られたことはありますが)、彼はいつも笑っています。非常に強い精神構造だと思います。

 その彼は今、全ての店の権利・運営を他の方々に譲り、一切の事業から手を引いています。先日久々にお話しをさせて頂いたら、あるブルーカーボンに携わるNPOと組んで、これまた大好きな自然を守る一役を買いたいと奮闘しているそう。どこまでもお元気なお方です。

 でも…不思議なんですよね。私の独断なのかもしれないんですが、この方は決して計画的に物事を進めるタイプの人間ではない。出たとこ勝負というか、熱しやすいというか、将来を見越して今何をするべきか、なんてまるで考えていないように見えるのです。人と巡り合い、意気投合すると、その人をもう信用してしまう。そして共同事業に手を出したり、その人を助けたり。ご自分でも「俺は単細胞なんだよね。」とおっしゃっておりましたし。なのに、いつもアンテナ高く、(IT以外の)新しい事に敏感でお年を感じさせないエネルギーに満ちている。はい、とっても不思議です。

 大病に倒れ入院していた時も、肉親の方と悲しい別れをご経験なさった時も素直に悲しみはすれ、後悔はせず。過去よりも今と未来を創ろうと前向きに思考する。そして行動する。彼はまさに「今が一番若い」を絵に描いたような生き方をしています。

 実は私は還暦を目の前にして「そろそろ仕事のギアチェンジかな」とか、「悠々自適って楽しいかな」など、思考が隠居モードになりかけておりました。けれど、私より20歳近くお年を召した彼が、「世の中に貢献したい」と楽しく生き生きとしているお姿を拝見しちゃったら、そんな気持ちは吹っ飛びます。さて、私は何に触手を伸ばしましょうか。新しいビジネスモデルを画策しては消え、というこの頃ですが、そろそろ本腰を入れるために手綱を引き締めましょうか。