役員メッセージ 生きていくTips

かつ便りNo.128 ~反面でも教師~

 

 みなさま 田中かつゑです。多頭飼いでは猫同士の小競り合いが付きもの。先日も1匹が誰かに尻尾の付け根を引っ掻かれ病院へ。獣医さん曰く、「睨み合いで負けた仔が背を向けて退散する瞬間に相手が猫パンチで攻撃するんですよ。」ニャンコの爪は鋭く尖っております…

 昔々のお話です。入社後数年経ち、仕事も何となくわかってきたと勘違いをしていた私は、とあるセミナーに参加しました。それは「自分の可能性を広げ、今以上にステップアップができる」との触れ込みで、計4回ほどの講義を受けお値段はブランドのバッグが買えるほど。決して安からぬセミナーなのでとても期待していたことを覚えています。参加していた方々は総勢20人弱。起業を目指す、転職を考えている、社内政治に勝とうと虎視眈々と狙っている…とそれぞれ思惑はありますが、みなさま、何かの目標を持っていらっしゃることは分かりました。誰もがインストラクターの講義中熱心にメモを取り、質問も活発です。すごいなぁと半ば圧倒されそうになる私。自分だけが場違いじゃないのかなと少々不安になってきました。

 時間が流れ、グループディスカッションの時間に。World Café(※)方式が採用されました。私たちはグループ内で役割を決め、与えられたテーマを深堀していきます。グループの人数は6人、みなさま全員バックボーンが異なることから、本当に様々な意見・価値観が出てきます。奇しくもテーマは「仕事の成果が出ていない部下のやる気を引き出すには?」そしてですね、私以外のグループ員の意見は以下のようなものでした。

Aさん:どうせ自滅して(その会社から)去っていくのは明白なので、なにもしない。自分の時間をその人に割くのはムダだと思う。

Bさん:面談をして、その人がやる気が出ると主張して部署に配置換えをしてもらうよう人事と交渉する。

Cさん:「もっとがんばろうよ。そうでないとあなたの評価が下がって良い事はないよ。」と諭す。

Dさん:何か悩んでいるかもしれないので、産業医との面談を設定する。

Eさん:その部署ではダメだと思うので転職を促す。

極端ですね。そして、彼らの中では既に退職・社内移動・降格・病気・転職などの可能性を前提にストーリーが出来上がっているのだなと思うと、うすら寒くなりました。こそっと、彼らの現職を拝見すると、みなさま素晴らしい企業にお勤めの管理職の方々です。対する私は入社4年目のまだまだヒヨッコ。きっとまだ、私は社会人として未熟だからこれらの意見が受け入れられないのだろうな、と愚かにも考えてしまったため、このグループでのディスカッションでは何ら反論する事もなく、グループとしての結論をAさん案として皆様と一緒に採用してしまったのでした。(ちなみに私の意見は「その人がどんな意見や価値観を持っているのかわからないのでまず、傾聴する。その先は(私の経験値が足らないので)まだわからない。」という何とも頼りないものでした。)

 World Caféのため、グループ内の1名を除き、時間が来たら全員他のグループテーブルに移動していきます。そして、私は残る一人となり、私が座っているテーブルには他のグループで決定した結論を携えた5名が新たに加わります。さて彼らの結論はどうだったのか、私は自グループの結論を説明した後、彼らに耳を傾けます。すると、彼らは口々にその結果に至るプロセスに対して疑問を発したのです。

彼らが言ったのはこんなことでした。

  • 会社の業種や規模、人員構成などは?
  • 部下の年齢、ポジション、仕事の内容等プロフィールは?
  • 仕事の成果が出ないって具体的にどんなこと?
  • やる気ってどんな状態を指すの?

これらを前提条件できちんとグループ内で合意をしておかないと、各々が自分の中で異なる部下像を作ってしまうと教えてくれたのです。正に目から鱗。
そしてその後、彼らが私に話してくれた結論はこんなことでした。

Fさんのグループ
前提条件:大企業の間接部門にいる20代の独身社員。遅刻が多く休みがち。
結論:仕事の内容が本人とミスマッチの可能性があるので面談の上、必要なら配置換えを検討。

Gさんのグループ
前提条件:中小企業のベテラン社員。会社の事情を熟知している。
結論:まずは人事と相談。本人とも面談。本人の能力の問題か故意かを見極め措置を検討。

結論だけを聞けば、私たちのグループメンバーが主張した個々の意見と大差が無いように見えます。しかし前提となる条件が異なると、こうも措置が異なるのだなと改めて勉強になりました。と、同時に私たちがグループディスカッションの始めに意識統一を行わなかった(誰も言い出さず、いきなり結論の意見交換となった)ことは素晴らしい反面教師として心にしっかりと刻まねばと強く思いました。

 どんな判断をする時でも、簡単でやりがちなのが自分の中の経験値と価値観を軸にしてしまう事。これに大きな落とし穴が潜んでいることに気づかせてもらっただけでも、このセミナーは私にとって価値があったと思います。同時に与えられた情報だけを鵜呑みにして物事を判断してはいけないということを深く心に刻んだ若き私でした。

https://world-cafe.net/