役員メッセージ 仕事に関すること

かつ便りNo.132 ~茹でガエル~

 みなさま 田中かつゑです。家族になって1年以上経つ新入りニャンコが、この間初めて「ゴロゴロゴロ」とほんの小さく喉を鳴らしてくれました。嬉しい~。でもまだまだ抱っこは怖いみたいで、私の腕の中で固まってしまいます。外の世界で沢山嫌な目にあったのでしょうか。ゆっくりゆっくり慣れていこうね。

 同じ環境・メンバーで仕事をしていると、当然ですが「慣れ」が生じます。同時にお互いの性格や仕事のやり方もある程度理解が進んでいるため、何事も阿吽の呼吸で捗ることが多いです。トラブルもなく、毎日が平和に過ぎていき、気がつくと去年の今頃も同じことをしていたなぁ、などと。
昨日と同じ今日、今日と同じ明日が来るんだろうな、と意識はしていないのだろうと思うけれど、かといって変化が生じる等とは微塵も感じていない毎日。これは良いことなのでしょうか、それとも…。

 こんな話を聞きました。その方(Aさんとします)は、12年程同じ部署で同じ仲間と仕事をしておりました。Aさんはコツコツと実績を積み重ね、その上司からも重宝がられていた、と彼は言います。ところがある日、会社の方針転換でAさんの居た部署は他部署と統合され、可愛がってくれていた上司は別の部署に異動となりました。新しくAさんの上司となった方は(彼の言葉を借りると)神経質な方で、仕事の進捗や納期に関する報告が滞ると厳しく指導をされたそうです。「前の部署では報告なんて必要なかったのに。」「前の部署では納期を自分でずらしても良かったのに。」Aさんの愚痴が増えていきます。新しい仕事のやり方、人間関係、上司とのコミュニケーション等に戸惑い続けたAさんはいつしか、「今後」に対峙する事ができず、「昔」に拘るがあまり、旧知の仲間との関係もぎくしゃくしてしまいました。

見かねて周りの人がアドバイスや指導をしてくれるのですが、心が固まってしまったAさんには届きません。こうなるとAさんに関わろうとする人が段々と減ってきているようで、「最近は何をするにも自分一人なんだよね。」と少し寂しそう。

では、と他部署への移動を示唆しても、「仕事内容が分かっているこの部署が良い。」と言い張るばかりです。それなのに、「この頃新しい仕事が増えて、自分ではよく分からない。」とAさん。彼は頑なに昔の仕事を一人で守り続けているようなのですが…年々その仕事は無くなっていき…。

 世の中の流れに沿って、産業・仕事・人々の行動パターン・価値観などは日々変わります。時に全く予測すらしなかったサービスや商品が颯爽と世の中に飛び出し、一世を風靡します。今までちやほやされていた技術は時代遅れとされ、それらを扱っていた産業すら生き残りが厳しくなることも見受けられます。10年程前に世界で著名な写真フィルム会社が倒産したことを覚えていらっしゃるでしょうか。そしてそのイノベーションのジレンマは個人のレベルでも起こり得るかもしれません。

 今までこうやってきたから・今まで上手くいっていたからは、明日も上手くいく保証ではないのです。また、自戒も含め肝に銘じておかなければならないのが、「過去の栄光が未来の自分の成長を妨げる可能性が高い」ことだと思います。そのプライドが新しい世界への扉を開く(=知らない怖い世界へ行く)ことを拒否するからです。でも、私たちはその知らない世界へ踏み出さなければ、時代に取り残されてしまうことも薄々は分かっています。

 特に技術系のお仕事をなさっていらっしゃる方、目線を高く、世の中の動きに敏感になって頂きたいです。今日まで主流だった技術が、彗星の如く現れた新興の技術に取って変わられ、その産業自体が斜陽になってしまう事が今までにも数限りなく発生しています。(ポケベル・ワープロ・フロッピーディスク等等)

 自分がいま所有している技術は転換可能だろうか、自分の今をベースにどのように新しい技術を身に付けていこうか、何が今後流行るのだろう等、今を謳歌すると同時に未来に向かって何時もアンテナを張り、自分で努力しながら技術幅を広げ、応用を考えて欲しいです。毎日が情報過多で気が抜けないとは思いますが、決して昨日に満足することなく、明日を見て、興味の心を絶やさずに向かって欲しいと切望します。私が若い頃よりも、もっとずっと技術の進歩が速い今こそ、技術者は技術に振り回されることなく、使いこなし、構造を理解して欲しいと、元技術者からのお願いです。