役員メッセージ 素敵な方々

かつ便りNo.138 ~備えは大事~

 

 みなさま 田中かつゑです。猫じゃらしで遊ぶのが大好きな仔がいます。けど、他の仔も(というかほとんどのニャンコが好きなんですね)猫じゃらしは大好きなので、私が遊ぼうと用意するとみんなが寄ってきてしまいます。言い出しっぺの仔は、そっとその場を離れて、他の猫じゃらしをくわえて自分の足元にポトリ。じっと自分の番を待っている?姿はいじましいです。

 月に数回1,000M程の低山に登ります。この位の山だと健脚でない人でも2-3時間程で頂上まで登れるため、未就学位のお子さまを連れたファミリー、ワンコと一緒の方、日帰りツアー?の集団と、様々な方が頂上を目指します。行きかう時は互いに挨拶をかわし、時には悪路の情報を共有したり、狭い登山道ではお互いに譲り合いながら、各自自分の体力と相談しながら楽しみます。

 足柄のある山に登った時、とても対照的な2つのパーティーをお見受けしたので今回はそのご紹介です。私は後者の方々の様に楽しみたいなと思いましたがみなさまはいかがでしょうか。ちなみにその山は高くないとはいえ、鎖場、台風被害などによる崩壊地、痩せ尾根、滑りやすい岩場など登山につきものの危ない場所はやはり存在します。

 前者、Aチームは若い男性5人組のパーティーです。どうやら山に登るのは初めての様子。全員Tシャツ(木綿)とスエットパンツ、スニーカーという軽装です。リュックの中はお菓子だけかな?とても嬉しそうにはしゃいでおりますが、大丈夫でしょうか。
後者、Bチームはお年を召した男性2人組。同じ山を登るとはとても思えない大きなリュック、トレッキングポール、帽子。服装も夏山登山に相応しく速乾性のある化繊の長袖シャツです。水筒も大きなものを用意。おお、本格的です。

 偶然にも私たちと休憩地点が合致したのか、この2つのパーティーには計5か所位で一緒になりました。Aチームの方々は緩やかな坂の場所は駆け上がったり、岩場で写真を撮ったりと賑やかです…が、頂上に近づくにつれ疲れが顔に出てくるようになりました。Tシャツは汗でぐっしょりと濡れています。栄養補給のお菓子や飲み物は果たして足りているのでしょうか。段々と口数が少なくなり、休憩所では下を向いてしゃがみこんでいる人も出てきました。(しんどそう…。)

Bチームの方は淡々と同じペースです。トレッキングポールを上手に使い、自身の体力を無駄に使わないように調整しています。休憩場所では静かに語らい、水分と栄養を充分補給し景色を堪能しながら元気を整えています。(富士山が綺麗に見えました!)

 さあ、頂上です。Aチームの方々は(予想通り)お菓子と水分は既に無く、ぐったりとしています。若い方々なので、少し休めば体力は回復するとは思いますが。(下りは大丈夫なんだろうか…)

Bチームの方々はいそいそとリュックからクーラーボックスを取り出し、ゼリー・お団子・カットフルーツなどでお茶会です。水筒には冷たそうな緑茶がたっぷり。穏やかに青空と雄大な景色を楽しみながら、ゆったりと過ごしています。

と、不意にBチームのお1人がAチームの若人に声を掛けました。「自分たちは年を取ったせいか、持ってきた食事を全部食べられない。どうか年寄りを助けると思って、食べてはくれないだろうか。残して帰るとウチのやつ(多分奥さまかと思われます)に怒られてしまうのでね。」

何というエレガントなお声掛けでしょう。おそらくBチームの方々はAチームの危なっかしさをハラハラしながら見ていたのではないでしょうか。そして、上りよりも断然距離がある下りに臨むのに、空腹と喉が渇いた状態では彼らが危ないとご判断なさったのでしょう。

Aチームの若人たちはBチームのご提案をありがたく頂戴し、そこから和やかな団らんが始まったのです。

 私たちはその後の予定が詰まっており早々に下山したため、その後A・Bチームのメンバがどのように時間を過ごしたかはわかりません。けれど、おそらくBチームの方々はそれとなく自然に、山の恐ろしさと備えをAチームに諭し、Aチームは素直に聞き入れたのではないかと思われます。

登山での食料・飲料の不足はその人の体力・気力を奪います。濡れた衣類は体温を奪いさらに体力を消耗させます。靴底が平で薄い履物は足を酷使し、怪我の原因にもなります。

 レジャーは「ただいま!楽しかった」と元気に帰宅することが醍醐味です。特に自然が相手のお出かけでは万が一に備えた装備は必須。 備えあれば憂いなしは本当だな、あのBチームの方々の様に観察眼と思いやりや配慮を備えた人になりたいな、と食べきれなかったお握りを午後のオヤツにしながら、私は思ったのでした。