役員メッセージ 生きていくTips

かつ便りNo.141 ~「何でも聞いてね」~

 

 みなさま 田中かつゑです。夏はニャンコとの触れ合いが少なくなります。彼らも暑いので人間の膝には乗りたくないのでしょう。その代わり「撫でて~」とお腹を見せることが増えました。これが中々曲者で、私の手が台所仕事途中などでしっかりと乾いていないと…ニャンコを撫でた時に…毛がびっしりと…付いて来るのです。まだまだね、夏ですからね。毛が抜けますよね。

 この頃改めて思う事があります。それは、未知なるものを教わる時、教えてくださる人がいくら「分からないことがあったら遠慮なく何でも聞いてね。」と言ってくださったとしても、たった一回の説明では、本人が本当に抱えている疑問を的確に表現し質問をすることはおそらく困難ではないか、という事。

これは教える側から見ると、せっかく準備をし、分かり易く説明をしたつもりでも、聞き手からの無反応に対して、軽いショックを受けることにも相当します。この行き違いは少々しんどいものです。

 みなさまはこんなご経験はありますでしょうか。まずは教わる側から。

1.そのトピックに関する前提知識が何もない状態で臨んだ講演会などで
講師の方がおっしゃった内容は理解できた様に思った。その後、質疑応答時間が設けられたが特に聞きたい事が無かった。しかし、その分野に関し知識を深めて行くと、あの時聞いておけば…と思う疑問が湧いてきた。

2.新しいことを教わる時
先輩が一通り仕事内容の説明をしてくれた。「質問は?」と聞かれたが特には思い浮かばなかった。が、いざ教わった内容を実施しようとすると何をしていいのかわからない。結果「何がわからないのかがわからない」状態であることがやっと認識できた。

3.初見の事柄に対し説明を受けた時
相手が言っている内容は理解できていると思ったので、メモを取らず、確認もしなかった。相手は自分が全て理解したと思った様だ。けれど、実際に事にあたると順序は?チェックポイントは?範囲は?など、自分がうろ覚え状態であることに気がついた。

ここからは教える側です。

A. 講演会の講師をしていて
事前アンケートで聞きたいポイントを書いてもらい、出来るだけ具体例も挙げ、丁寧に説明をしたつもりだ。そのせいか、講演後、受講者からは何も質問は出てこなかった。しかし事後アンケートでは、「よくわからなかった」「ポイントが明確でなかった」などの記述が目立った。色々具体例を挙げ過ぎて混乱させてしまったのか…?

B. 新人に業務を説明した時
相手のレベルを加味し、優しい言葉を選び、専門用語には解説を加え項目ごとに分かったかどうかを確認しながら説明を終了した。最後に分かったかどうか確認したら。大丈夫と答えが返ってきたので安心していたら、新人は自分の席でボーっとしている。「どうしたの?」「私は何をすればいいのでしょうか?」わかったと言っていたのは何だったんだろう…

両方の経験がある私が考えるに、この解は以下の2点に集約されると思います。

まず、教わる側の立場として。

・初見の事項に対して、丸腰で臨まない
予習は不可欠だと思います。前提知識を蓄えておくことで、専門用語が出て来ても思考が中断することが無くなります。教える側が話す内容に予測が出来るため、理解が出来るようになります。これで自分自身の中で咀嚼できることと、出来ないことの区分けが出来るようになります。そうなると、理解できない部分や自分の中で矛盾・不合理を発見した箇所について「わからない」と明確になり、質問と言うステップに進むと思います。

・メモを取る
初めてのことを耳だけの情報で記憶に留めておくのは難しいと思います。メモを取りながら、話の節目節目で自分の理解が正しいかどうかを確認しながら聞くと、理解している事・誤認していることが明確になり話し手もより詳しく説明してくれるでしょう。

・振り返る
聞いているその場では、解った気になるんです。私もそうです。でも本当に理解したかどうか。次の日などちょっと時間が過ぎてから改めて振り返ってはいかがでしょうか。本当に理解しているのか、または分かった気になっていたのかが自分ではっきりすると思います。

片や教える側ですが、私は以下の方法を取っています。

①1:1で教えられる場合

  • 聞き手にメモ取りを促す
  • 全体概要⇒各詳細説明の順で話す
  • 専門用語や機能説明をするときは聞き手に身近なたとえ話で理解度を高める努力をする
  • 区切りの良い所で聞き手に復唱してもらい、こちらからポイントを質問してみる

これらのプロセスを繰り返します。一回では上手くいかないことが多いです。

②講演会のような多人数が聞き手の場合

  • 話題に興味を持ってもらうよう、その話題を聞くことへの聞き手のメリットを明確にする
  • 全体概要⇒各詳細説明の順で話す
  • 持ち帰られる資料を用意し、メモを取って頂く。記憶に残らないであろう専門的な事は資料で補足

 でも何と言っても一番の解決方法は聞き手が主人公になる事です。未知の事柄に興味を持って自身で調べ、理解度を深めて行く。その過程で話し手に質問をすることでその人を上手に活用し、補ってもらう事で自分のスキルを伸ばしていく。「何でも聞いてね。」は上手く使ってくださいね。