役員メッセージ 仕事に関すること

かつ便りNo.148 ~生産性は何で計るべきか~

 

 みなさま 田中かつゑです。ようやく雲も秋仕様になってきました。ニャンコのお昼寝場所も「暑さ回避」から「快適な場所」に移っているようです。今は移行の真っ最中なのか、お出かけ前の点呼時にどうしても見つからない仔も。必死になって探していると、押し入れの隅っこから光る眼が二つ。。。

 仕事には(労働)生産性という言葉がつきものです。では、その(労働)生産性、とは具体的に何を指すのでしょう。公益財団法人 日本生産性本部の記述をお借りすると、「労働者1人当たり、あるいは労働1時間当たりでどれだけ成果を生み出したかを示すもの」となるようです。そうなると1人当たりの時間生産性は、「生産量/労働時間」で表現されます。同じ仕事内容であれば、速く完成できれば生産性が高いと判断されるわけですね。

 確かに。身近な例で言うとスーパーマーケット等のレジ打ちのお仕事を想像するとお分かりになるかと思います。あのお仕事、ベテランの方と研修中の札を付けた方を比較すると、処理にかかるスピードが全然違いますよね。ベテランの方は全ての商品に対して熟知しているご様子で流れる様に会計を済ませていき、例外的な事項にも、臨機応変な対応をして下さります。片や研修中の方は何をするのも初見っぽく、一つ一つの所作がムダに映ります。さらにちょっとでも割り込みが入ると思考が停止する様で、浮かべる困惑した表情に客である私たちの方が同情してしまうほど。そして研修中の方が担当するレジは並ぶお客の人数が少ないのに進捗が悪いです。「ベテランの方の生産性>研修中の方の生産性」の式は成り立つと思います。

 では、1人1人の仕事内容、種別が異なる組織内での個々人の生産性はどのように計ったら良いのでしょうか。また、創造的仕事に対する生産性は求められるべきなのか…?これらは未だに私の中で、すっきりとした答えを導き出せない、ほぼ棚上げになり続けている課題の一つです。

 私が何に判断を迷っているのか、分かりにくいと思われますのでAさん、Bさんと言う2人の仕事例を挙げてみます。評価をする立場の方、される立場の方各々の視点で読んで頂ければと思います。

 あるソフト会社でのお話。2人のプログラマーが入社しました。Aさんはムードメーカー。ちょっと雑談が過ぎることもありますが、明るい笑顔と気の細やかさでプロジェクトの進行に寄与してくれています。彼自身は自分の低スキルを気にしていて、資格習得やコミュニティへの参画など、勤務時間外に色々努力をしているようです。(その成果がでることを上司は期待しています)

 Bさんは猪突猛進型。スキルアップにも貪欲で勉強を怠りません。特にものづくりに関してはコーディング力が勝っており、人の1.3倍位のスピードで仕上げていきます。(さらにバグも少ないです)

 2人の生産性を無理やり計るとこんな式となります。
入社半年後:
Aさん=顧客アプリケーション開発(規模小・難易度初級)×1÷6か月
Bさん=顧客アプリケーション開発(規模中・難易度初級)×1÷6か月

ここだけ見るとBさんの方が圧倒的に生産性が高いですね。ではプログラム開発以外のパラメータで2人をもう一度見てみます。

Aさん=大規模プロジェクトへのサポート業務参画+事務所レイアウト変更案提言÷2ヶ月
Bさん=他プロジェクトへの技術サポート÷1ヶ月
お二人とも組織の中で色々技術スキルを磨いているようです。

 時は流れて、5年後。二人はどのように成長したのでしょう。
同じようにある半年間のプログラマーとしての仕事に対する生産性を示します。
Aさん=顧客アプリケーション(規模中・難易度中級)×1÷6か月
Bさん=自社アプリケーション(規模中・難易度上級)×1÷6か月

さらにプログラム開発以外の成果としてはこんな感じ。
Aさん=PM(Project Manager)×2案件+社内改革PJ企画立案÷4ヶ月
Bさん=社内改革PJシステム要件関連(仕様書・設計書)作成÷3ヶ月

お気づきの事と思いますが、Bさんがプログラム開発に関するスキルを高めているのに対し、Aさんはマネジメントスキルが高まっているんですね。二人の方向性は異なれど、入社5年生としてかなり活躍していると思われます。

ところが、Aさんに対する組織上司の評価は、Bさんと比較すると実はあまり良くないのです。何故か。Aさんの職種がプログラマーだからです。仕事に関する必要スキルと照らし合わせると、難易度の高いプログラム開発をこなし、上流工程の設計まで出来るようになったBさんの方が、生産性が高いという評価になってしまうのです。

 もしAさんが職種変更を申出、事業企画などの部署に配属されたとしたら、Aさんの生産性評価はもっと高く扱われた事でしょう。このように自分のミッションに対する成果が厳密だと、職種を越えた仕事への挑戦が狭まってしまうのが、評価にずっと携わってきた私の悩みそのものです。   実はAさんに対しても「担当外の評価」として加点を付け、本人のモチベーションと挑戦を応援していたのは、また別のお話です。