役員メッセージ 仕事に関すること

かつ便りNo.154 ~資格~

 

 みなさま 田中かつゑです。気温が低くなってきたので、ニャンコたちのために毛足の長いカーペットを用意しました。高い所が好きなニャンコも、温かさには抗えないのでしょう。この頃はカーペットの上で何匹か団子状態で固まって寝ています。冬がそこまで来ているんですね。

 サブスクリプション(サブスク)のビジネスモデルは今やどんな産業でも目にします。古くは月額制、定額制などと言われていましたが、カタカナ呼称になって新しいビジネスモデルのような印象となりました。この、「継続的に胴元にお金を払い続けることで、消費者が胴元所有の商品を利用(または購買)し続けることが可能」というビジネスですが、音楽や小売り品に限らず資格などにも古くから採用されているのはみなさまご存じのことと思います。やはりビジネスは「胴元」になる事が大きな儲けを生み出すのだな、と感じました。

 例えば着付け。この技術は
①自分で鏡を見ながら着物を着る
②鏡を見ずに着る
③20分以内に着る
④人の着付けが出来る
と難易度が上がります。ここまで来てやっと講師となれる民間、あるいは国家資格取得相当の技術が習得できる手筈になります。ここまでで掛かる期間は1年から2年。費用は10万円とも15万円とも言われ、さらに資格取得の受験料も掛かります。結構な金額ですね。そうして、めでたく講師の資格を取得したとしましょう。すぐに個人で着付けビジネスを立ち上げ、軌道に乗せることは出来るのでしょうか。大手の競合がひしめく業界で、個人事業主が独自で着付け教室などの看板を掲げることは結構ハードルが高いと思います。事実、私が通っていた着付け教室でも、講師の方々は元生徒さんだらけ。彼女たちは講師資格を取得するために着付け教室に投資し、そのままその着付け教室で契約社員として働いているということになります。全国に教室を持つその会社では、そのような方々が沢山いらっしゃることと思います。

 二つ目はIT関連の資格。これも数段階に分かれた難易度別の資格取得ですが、上記と異なりその資格を保持し続けるためには数年ごとの更新が必要です。かかる費用も数万円から数十万円程まで様々。転職活動をなさる方やフリーランス等の方々にとっては履歴書にその資格を記載することで、自分の保有する技術を証明することができますね(時折資格マニアの方もいらっしゃいますが…)。
企業によっては資格手当などのインセンティブ制度を採用している所もあります。取得者が多い資格はデータベースとクラウド関係が二強。おそらくIT技術者の方々は何かしらの資格に挑戦、取得なさっていると思います。各ベンダ(胴元)にとっては、技術者がお金を払って自分のテクノロジーを習得してくれ、その技術をユーザーに広げてくれ、ずっとテクノロジーに追従してくれる素晴らしいお客様(技術者)が沢山いるということですね。大体ですが著名ベンダの決算書を拝見すると、この資格関係のビジネスボリュームは総売り上げの10%内外を占めているようです。すごい額であることが想像できるかと思います。

 前者の着付けと後者のベンダ資格ですが、胴元が儲かるという図は(規模は違えど)同様かと思われます。違いは資格取得者の経験プロセスと活かし方かな、と。着付けの講師は、実技プラス知識を問われますが、実技のウエイトがかなり大きいです。他人様に手早く美しく着物を着せ、着崩れしない状態を保ち、着物を着ている時間を楽しんで頂く。それを証明する資格は漏れなくかなりの実践知が付いてきます。つまり、着付けの講師は技術に於いてはその道のプロフェッショナルです。但し、その技術を活用して自身のビジネスに即転化可能か、と言われると大きな疑問符がつきます。
お相手であるお客様に対しての立ち振る舞い、話題のご提供、心地よい空間作り等、着付け技術の他にお客様を引き付けるコミュニケーション技術も同時に必要となるからです。事実私が通っていた教室でも、生徒から人気がある講師とそうでない方ははっきり分かれていました(この辺生徒の目は辛辣です)。 稀にクレームを上げる生徒もいたようで、胴元の方々が対応に苦慮している様もちらほら漏れ聞こえすることも。

 対し、IT関連の資格取得者は資格を取った時点での経験値は統一されていません。机上の試験対策のみでその資格を手にした方もいれば、長い経験の後、力試し的な意味合いで「資格」と言う目に見える証明を手にした方もいるなど、各人の実践スキルレベルと取得した資格が必ずしも一致しないためです。よって、転職市場でもフリーランスの方との契約時にも、面接を行う側の人は臨む方の取得した資格の文字に踊らされることはありません。それよりも、その人のスキルはどのくらい高いのか、経験はどれほど積んでいて何が出来るのか、逆に何ができないのかを探ります。当然即戦力としてご活躍願えるのか、ある程度の下働きが必要なのかも含めて値踏みが始まります。そのため、面接官は資格取得者に対して該当スキルに関する様々な細かい質問をすることが多いです。その人の資格が机上の付け焼刃か本物かを冷静に判断しているのです。 同じ資格でも技量の積み重ねが必要なもの(上記着付け、スポーツのインストラクター、整体師等)とペーパーでの記述式やPCでの選択問題で取得できる技術系では「資格を取得した」後に必要となる技量が異なるのかもしれません。両者共資格に胡坐をかかぬ様、コツコツと経験値を積んでいくことが一番大事なのだと思います。身に着いた様々なスキルはあなたを裏切りませんし、自らの成長への確実な歩だと思います。