役員メッセージ 素敵な方々

かつ便りNo.155 ~味覚~

 

 みなさま 田中かつゑです。我が家のニャンコ達は全員避妊/去勢済なのですが、自然の摂理なのか、元男の子が元女の子にアプローチすることが時々あります。すると…そんな気がまるでない元女の子がものすごく怒るんですね。般若ってこんな顔をしているんだろうな…と、恐れ慄く飼い主です。

 先日、インド出身の友人がしゃぶしゃぶを食べてみたいと言うので、その友人姉弟と某しゃぶしゃぶ専門店に行きました。そこで、正に味覚に対する文化の違いを感じ、これは食べることだけでなく、生活様式や仕事に対しても通じるものがあるのだな、と思う所があったのでご紹介します。

 前提条件として、彼らは海のないインドの北部出身のため、日本に来るまで魚介類を食べたことがありませんでした。そのため、馴染みのないそれらが苦手です。以前彼らと和食をご一緒した時に、(日本人である私が)びっくりしたのが、「出汁」の香りを臭いと感じ、澄まし汁が頂けなかったこと。他にもお刺身はもちろん、焼き魚・煮魚・フライ等等、調理法に関わらず魚介類はダメでした。

 そんな彼らなので、昆布出汁に肉を潜らせて食べるしゃぶしゃぶにはいかがかな、とちょっと心配だったのですが、換気が行き届いているお店であったこととタレがポン酢とゴマダレだったことも幸いし大丈夫そう。ほっとしました。

 次にお肉です。私たちが何も考えずに食べている牛肉。彼らは選びませんでした。それは、故郷では牛が当たり前のように身近な存在だったため。牛・馬はペットの様な位置づけだそうです。で、ヒンドゥー教ではない彼らは豚を選び、いよいよ食事の始まりです。

 まずタレ。ポン酢ともみじおろし、ゴマダレとラー油。それぞれを説明すると、彼らは辛みをそれぞれのタレに大量に投入。私は彼らが「辛い味」にかなり耐性が出来ている味覚を改めて実感。

 お肉は器用に箸を使って1枚ずつスープにくぐらせ、さあ、食します。どうかな?おおっ、美味しいそうです。良かった。

 付け合わせの野菜に移ります。白菜・えのきだけ・しらたき・ワカメがそこのお店では提供されましたが、しらたきとワカメは絶対に説明が必要だな…と思う間もなく「これは何?」。はい、お答えします。幸いなことに彼らは食べず嫌いではないので、果敢にしらたきとワカメに挑戦。これらはカロリーが殆ど無くて、整腸やダイエット目的で食べる人が時々いることを説明すると、お姉さんの方の瞳がキラリと光ったことを私は見逃しませんでした。

 食事が終わりデザートです。おや?さっきまでの食事のメニューを見ていた時と全然真剣さが違います。デザートメニューにはぜんざい・白玉あんみつ・バニラか抹茶のアイスクリーム・葛切りが載っていたのですが、それぞれについて説明して!と真剣なまなざし。ああ、彼らだけでなく、私が出会ったインドの人は全員甘いものが好きなんだな、と改めて実感。結局彼らはアイスクリームを、私は葛切りをオーダーし、おそらく葛切りそのものを知らない彼らのために、それをおすそ分けしたのですが。ここで、またもや味覚の違いに遭遇します。葛切りに付いて来る黒蜜をアイスクリームの上にかけ、美味しそうに食する彼ら。ヘタをするとしゃぶしゃぶよりもデザートの方が気に入ったの?かな?とも思える笑顔です。アイスクリームと黒蜜。彼らは「甘い味」にも耐性があるのですね。そういえば以前、彼らにお土産として私が作ったちらし寿司を差し上げた時、「でんぶ」がとてもお気に入りになった様で、魚は嫌いだけど、この「ピンクフィッシュ」だけは甘くて好きだと感想を頂きましたっけ。

 彼らと楽しい時間を過ごした後、改めて食文化の違いを思い知った訳ですが、これは食に限らず所作・慣習・考え方・行動パターンなど、身近でも自分から見たら「異」であることに遭遇することなんだな、自分基準で物事の全てを考えてはいけないのだな、と同じことだと思います。そしてもう一つ。彼らを偉いなぁ、凄いなぁと感じたのは、まるっきり異文化であり、時には理解に苦しむであろう日本の事をけっして批判しない事。牛を食べることについては、「自分たちは牛を友達のように考えているから食べることは忍びないけど、食べている人たちを批判する気持ちは全然ない。」と言い切るし、日本の生活様式についても、「最初は戸惑ったけれど慣れるし、自分から溶け込む努力をすれば周りの人たちが助けてくれることもあるので、それはどこに居を構えても同じだと思う。」と冷静です。ご自分の故郷を離れ、姉弟と二人だけの環境で、言葉も通じない所からスタートした彼らは、数々の辛酸や不自由・憤りや疑問などネガティブなイベントも経験してきたはずです。にも関わらず、自分から周りに溶け込もうと努力をし、周りの良い所にフォーカスして馴染んでいく。そして、心の中で頃合いを保ちながら、程よく日本という国や人たちと付き合っていく。その緩やかさは私たちも持った方が良いのかもしれません。