役員メッセージ 仕事に関すること

かつ便りNo.158 ~観察の癖をつけよう~

 

 みなさま 田中かつゑです。ニャンコの部屋には暖房器具としてオイルヒーターを設置しています。火事や火傷の心配をすることなく、安心してニャンコたちがぬくぬくできるからです。特に年齢を重ねた仔は寒さが堪えるのか、オイルヒーターと一心同体の様にくっついています。温かくて良かったね。年を取ると毛の量も少なくなってくるからね。

 慣れ親しんだ道を歩いていて、ふとあるべきはずの建物が更地になっていて、「あれ?ここはどんな建物だったのだろう?」と思う事はありませんか。ほぼ毎日その建物を見ていたはずなのに、いざ目の前から消えてしまうと何だったのか思い出せない。ひとえにそれは自分が意識してその建物を見ていなかったから。目の前の景色として認識はしていたのでしょうが、注意して観察していなかったのですね。よくあることだと思います。

 これがお散歩の途中での出来事ならば良いのですが、仕事の場面となると「あれ?」が通用しないばかりか、次に繋がる仕事のご縁を最悪の場合断ち切る事になってしまうことも無きにしも非ずです。特に社会経験が乏しいとご認識されるかたは、以下に記述する「お会いした方を観察し、推測すること」を意識して実行して頂きたいなと思います。このスキルは長い目で見た場合、きっとあなたを救うはずです。

 例えばこんな場面。初めてお会いするお客様、あるいは社内で初めて会った上司や同僚。それらのお相手をしっかり観察することは、今後のスムーズな仕事とお相手との関係構築に非常に重要なことになります。お相手が自分をどんな目で見ているのか観察できると、その対応が容易になります。好意的な場合はそのまま親交を深めれば良いのですが、そうでない場合、そのままでいると溝が深まったりしたら嫌ですものね。お相手が好意を持っていない場合、こんな矛盾が発生したりします。

  • 「会えて嬉しい」「これからよろしくね」など一見優しい言葉を発しているが、目が笑っていない(目尻が下がっていない)
  • 仕事で必要以上のことを話さない。雑談のきっかけを与えない

当然お相手は、あなたの内面を知らず、おそらくはぱっと見の第一印象で「好き・嫌い」を判断していると思います。あなたから「自分はこんな人間です」と頑張って打ち解けて心の距離を縮めていきましょう。

また、普段からお相手の動作の癖を観察しておくのもいざという時に役に立ちます。例えば、

  • 髪の毛を触る人
    ⇒まるで猫が毛づくろいをしているようですね。何かに困っている時や不安を感じている時に髪の毛を触って(自分で自分を撫でて)安心したい気持ちがある様です。
  • 眉間に皺を寄せる
    ⇒ちょっと怖いですよね。でもご本人は無意識の事が多いようです。臆せず話しかけても大丈夫ですよ。
  • 足や腕を組む
    ⇒心にバリアを張っていることや、本心を見透かされるのを恐れている場合が往々にしてあるようです。単なる癖のかたもいらっしゃいますが。こちらから笑顔で近づき、敵ではない事をアピールしましょう。お相手のバリアが無くなっていくと同時に腕や足を組むことの頻度が下がることが多いようです。

 私事で恐縮ですが、昔々私がまだ20代の頃、上司でとても怖い方がいらっしゃいました。その頃私は某IT会社でソフトウエア開発に携わっていたのですが、直属の上司がいつも机の上に足を(土足で)投げ出し、聞くに堪えない様なべらんめえ口調で一日中どこかに電話をしていたのです。私はその上司の事を正直苦手に思っており、自分が配置換えになるか、彼がどこかほかの部署に行ってくれればな…といつも思っておりました。そして1年後にその上司が会社を辞めた時ほっとしたことを覚えています。けれど、その頃の彼の言動が彼本来の姿ではなかったと、それからしばらくして人づてに聞いたのです。
その頃の彼は会社で所有している重要な特許を侵害した某社と、かなりギリギリのところで交渉をしていたそうなのです。詳しいことは分かりませんが、特許が専門技術だったことと侵害した相手方の会社がかなり強硬であったため、会社の弁護士たけではなく、その技術の第一人者である彼も第一線で交渉に携わっていたとのこと。お世辞にも上品と言えない彼の言動はそんな理由があったのでした。本来の彼は温厚で優しい方だったので、その交渉に疲れ果てて、退社に至ったと。
私は彼の表面だけの仕事振りから彼の内面までも下品だと一方的に決めつけてしまったのです。申し訳ありませんでした…と理由を聞いた私は心の中で彼に詫びたのでした。

 話しがそれました。お相手の観察ですが、さらに効果的な進めかたをご紹介します。お相手の服装の好み、着こなし方、バッグや小物類の好み等を把握しておく、趣味や好きなことを聞き出すのも良いですね。普段のその方を理解しておくことで、ちょっとした変化にこちらが敏感に対応できるからです。例えば、いつも寒色系の服装をしている方が暖色系の洋服を召した場合、「いつも素敵ですが、今日のピンクのセーターも雰囲気が変わってもっと素敵ですね。」などと声をかけたらいかがでしょう。ご本人は決して悪い気はしないと思います。それよりも普段から自分を気にかけてくれていたんだ、とお相手はあなたに対して親近感が湧くかもしれません。また新しいスマホ・時計・鞄など何かを新調したであろう時にその方にお声がけするのも、心の距離を縮める常套手段です。「いつも、あなたのことを好意的に見ていますよ。」という信号を送るのです。

 どんな仕事でも人と人の繋がりは大事です。そして、自分以外の人を観察し、理解するよう努めることは、図らずも自分自身をお相手に理解してもらうことに通じます。お相手があなたの普段の仕事への心構えや姿勢を見ていてくれれば、有事の場合きっと味方になってくれます。周りを観察・推測し、理解しようとするその努力は巡ってあなた自身の力とあなたを助ける機智になることでしょう。