役員メッセージ 素敵な方々

かつ便りNo.159 ~マルチリンガル~

 

 みなさま 田中かつゑです。腎臓病ニャンコの自宅医療行為として毎週の点滴が始まりました。これは飼い主が獣医師の指導の元、何回か実技訓練を経て実施するもので、そのニャンコが生きている限り続きます。普通、腎臓が悪くなったニャンコの寿命は2~3年だそうですが、私としてはこの行為がずっと続くことで、それだけニャンコが長生きしてくれればと祈るばかりです。

 インド北部出身の姉弟とお食事をする機会があり、お互いの文化を紹介しあったのですが、とても面白い場面に遭遇しました。前提として、かれらは故郷のPunjabi語、ヒンディー語、英語、日本語が話せるいわゆるマルチリンガルなのですが、こんな風に言葉を使い分けていたんです。

  • 私との会話は英語と日本語を使い分け。易しい言葉は日本語で。込み入ってくると英語に切り替え
  • 姉弟間では英語とPunjabi語が入り混じり
  • レストラン(インド料理店でした)ではヒンディー語(多分)

彼らの頭の中の語学に関する辞書はどうなっているんだろう。凄いなぁと唯々感心。
そこでふと、こんな疑問がわきました。「有事の時、彼らはどの言語を使うのだろうか」と。私の予想は、子供のころから慣れ親しんだPanjabi語だったのですが、回答は違いました。「英語」だったのです。彼らの言葉を借りると、街中は英語で溢れているし(標識等街中の何かの説明文はPanjabi語と英語が表記されているそうです。ヒンディー語じゃないんだ…)、同じインド国内でも、他の地方の人と会話する時はヒンディー語よりも英語の方が通じやすいし、インド国外だと尚更英語で会話をするから。それに英語で考えた方がしっかりとした結論が出やすいので便利だ、とのこと(便利だから、とは凄い)。
日本に居て、周りは日本語を話す日本人ばかりで、どんな表記も日本語が主なこの国の我々とは、基準がそもそも違うんだなぁと生きてきた環境や文化の違いを思い知ったのです。

 そして、言語がマルチだけでなく、考え方も簡単に言うとダイバーシティ&インクルージョンである二人は、日本に来てから海外出身だということで不快な思いはしたことがないと言います。多少不便なこと(例えば市から郵送される健康診断のお知らせなどが全て(彼らにとっては難しい漢字を多用した)日本語で読み切れない等)はあるにせよ、その時々で回りの人が助けてくれると。多分、愚痴や不平不満を言っても何も解決しない事を彼らは分かっているのだと思います。

 祖国では男尊女卑が職業や賃金にも影響しているため、女性が生活するうえで安心・安全な日本に来て自分の生活基盤を確立しているお姉さん。そのお姉さんの姿に影響され、同じく日本での人生を歩もうと日本の会社に就職した弟さん。言葉だけではなく文化の違いも楽しみ、日本での生活を楽しんでいる様に映ります。食べ物に関しても、宗教上制限が多い中、あれこれ工夫をし、彼らなりの生活スタイルを確立しているようです。

 そういえば、食事をしていてすごいな、と感心したことがもう一つ。おそらく彼らにとっては当たり前のことなのですが、ナンの扱い方が非常に上手なのです!片手で一口大にナンをちぎり、そのナンをスプーンの様な形状に持ち、カレーをすくってナンごと食する。鮮やかでした。私も教えてもらい挑戦しましたが、まず、片手でナンを一口大にちぎることが出来ない。両手で頑張って小さくちぎりましたが、それをスプーン状に出来ない、よって、カレーを上手にすくえない。うーん、難しいです。これはきっと彼らがお箸を扱うのが難しいと言ったことと同じ事に違いないと、食べることが大好きな私としては、インドの方々から見て失礼に映らないよう、ナンの扱いを練習しよう、と小さく思ったのでした。   

 言葉も文化も、価値観も色々なことが可能になると世界はもっと広がり、面白くなるんだな、と考えていたら、弟さんが帰り際に、「じゃあな、また遊ぼうな。」と親しくお言葉をかけてくださったのには、可愛くて笑ってしまいました。
もちろんです、また遊んでくださいまし。