みなさま 田中かつゑです。腹時計が妙に正確な仔がいまして、食事時間のぴったり1時間前から催促の雄たけびを開始します。普段は無口な彼が鳴き声を発するのは、このご飯前の朝夕のみ。やたらとぎゃあぎゃあうるさいのですが、こちらは儀式として割り切っています。やっと(?)ご飯が目の前に来た彼は、もう寡黙の猫。いっぱい鳴いて疲れたでしょう…。
先日蝋梅(ロウバイ)で有名な寄(ヤドリキ)に、お花見と登山を兼ねて行ってきました。当地の蝋梅園は日本最大級の20,000本を誇り、透明感溢れる優しい黄色の花々がこぼれんばかりに咲いています。一つ一つの花は微香なのですが、ここまで大規模な園だと、蝋梅の香りにとろけそうになります(とても良い香りです)。訪れている方々も、みなさま静かにこの早春の宝物を楽しみ、香りを味わい、20,000本もの木々を大事に育てて下さっている地元の方々に感謝の気持ちを傾けられているようでした。
この「寄ロウバイまつり」は今回で12回目だそうです。回を重ねる毎におまつりの様子が素敵になっていくなぁと実感しています。おそらく町内の方々が入念に計画を練り、私たち観光客を楽しませようと様々な工夫をしてらっしゃるのだと思います。
お年寄りや歩くのが辛い方には最寄りバス停から園までの送迎車。
観光客が歩きやすいように園内全体に敷き詰められた木のチップ。
順路を間違わないよう細やかに掲げられた指標。
立入ると危ない場所にはロープと注意書き。
そしてなにより、ゆっくりと花を愛でられるよう沢山の箇所に備え付けられたベンチ。
売店で売っている温かい食べ物と飲み物で身体も心もぽかぽかになれるんです。
真冬の中、こうして彩を与えてくれる花々に、そして準備をしてくださった町の方々に元気づけられるのはきっと私だけではないと思います。静かに花々を愛でるおまつりで、雰囲気がほんわりとしているためかワンコ連れが多いのもご愛敬。熱心に蝋梅プラスワンコのハレ姿を撮っている方々も多数。ワンコも笑顔です。
お花見の後は登山に移ります。今回は鍋割山の途中にある櫟山(クヌギヤマ)を目指したのですが、ここでも嬉しくなってしまう出来事がありました。丁度、県の高等学校体育連盟他が主催する山岳部の新人登山大会と日程が重なったようで、参加している高校生の安全を陰から支えるスタッフの方に偶然お会いしたのです。
彼らは定められたコースのポイント毎に待機している様で、各チームが何時何分にどこを通過したか、生徒たちの様子(具合の悪い生徒や脱落者有無の確認など)はどうか等を共有し、大きなパネルに記入しておりました。私がお会いした方々は櫟山山頂にいらしたのですが、おそらく登山のプロの方なのでしょう。「こんなことをやっていたら60(歳)になっちゃったよ」と照れ笑いです。山が好きで、山の良さも怖さも熟知しており、だからこそ登山を試みる若人たちが無事で楽しい思い出を持って帰って欲しい。そんな思いで休日にも関わらず大会の下支えをし続けてらっしゃるのだと理解しました。会社員の休日出勤が平日よりも時給換算で高いのに比べ、学校関係者の休日労働の対価は低いと聞きます。それにも関わらず、大会の準備も含めてかなりの時間を費やし、当日は生徒たちと直接会う事もなく、ただただ彼らを陰から支える。山とその世界に入っていく若人たちを支えたいという強い気持ちが無ければ到底出来ないことだと思います。頭が下がります。
少々の雑談をし、お仕事の邪魔をしてしまった事を詫びると、彼はぶっきらぼうながら私が行こうとしている目的地までの方角と通過に気をつけるポイントをいくつか教えてくれました。そしてまた、生徒たちの進行状況を他のコースポイントに居る係の方と共有しています。トランシーバーに向かって問いかける姿がやけにカッコよく映ったのは明るい日差しのせいでしょうか。
普段、私たちが気軽に参加している上記の様な行事には、当たり前なのでしょうけど企画・予算取り・スケジュール管理・部材調達・食料調達&加工・作業分担とクロージング等々、様々な場面で支えて下さっている方々がいらっしゃいます。みなさま、その道の経験が長く、登山家の方のようにプロの様な方もいらっしゃいます。彼らが自分の得意な事や経験値を次の世代や触れ合った人々に惜しげもなく与えて下さっているので、私たちは何も考えずその恩恵を受けることができるのだと思います。
あの蝋梅が毎年美しい花を付けることができるために、寄の方々はどんなご苦労をなさっているのだろう。山に訪れる人々のために山の番人(と勝手に命名しちゃいました)たちは、どうやって快適な登山道を実現しているのだろう。縁の下の力持ちはとても高いスキルがないとできない事なんだな。私も自分のスキルが他の方に活かせる場面がまだまだあるんじゃないのかな、と、下山しながらスキル+気持ちの足し算を考えた日曜日の午後でした。