役員メッセージ 生きていくTips

かつ便りNo.168 ~相手の心を即掴む~

 

 みなさま 田中かつゑです。我が家の長老ニャンコは14-5歳。段々と高い所に登るのが苦手になってきました。寝ている時間も増え、元気な年下ニャンコたちが走り回っていても熟睡です。獣医によると猫の寿命中央値は13歳から17歳(幅がありますね)とのこと。年を重ねて出来ないことが増えたり、病気が見つかったりと、老いの過程はきっと人間と変わらない彼ら。ずっと一緒だからね。

 3年ぶりに登山靴を新調しました。私にとって3足目の靴となります。日常生活用の靴とは異なり、登山靴は文字通り山に登るときにしか履かないため1年間での出番は30回に満たないのですが。そのため、まだ買い替えには早いかな?悩んだのですが、登山道は石積み・横木・丸太階段・痩せ尾根・岩場など危険と隣り合わせの箇所も多い。そのため、足元がしっかりとしていないと大げさに言えば遭難に繋がる。その危険回避のためにも、と購入を決めました。若い頃と違い、無理が効かなくなり、身体能力・判断力も共に落ちている私にとって、安全のための投資は必要と考えたのです。

 久々に行くスポーツ用品店の登山靴コーナー。そこにはピクニックから冬山登山まで、用途に応じた登山靴が多種多様に揃っています。お値段も一足20,000円程から60,000円近くまでと幅広くお財布との相談にも勇気がいります。低山しか登っていない還暦を迎えた私に合った靴はどれなのか。絶対に自分では決められない自信がある私は、迷わず店員さんを呼びました。

 この時店員さんの対応で、さすがだなと思ったことを書いてみます。この話術(やり取り)は日常で相手との距離を縮めたり、情報収集を自然に行ったり、断片的な情報から仮説を立てるのに役立つTIPSだと思います。

  1. 自分(店員さん)の登山歴と店員歴を紹介することで、客側(私)にプロとしての安心感を持たせる。
    ちなみに登山歴40年、店員歴30年だそうです。大ベテランの方ですね。
  2. 近々訪れた山の話題(XX山の梅が綺麗だった、YY山ではもう河津桜が咲いていた等)をきっかけにして、客がどのくらいの頻度でどんな山に訪れているのかを確認。その技量に合った靴を薦める。
  3. 靴から発展し、長時間歩行による疲れ低減・汗等の対策に話題を移し、インソール・インナー・アウターなどの拡販をする。

これらを一般的な言葉に置き換えると以下になります。

  1. 経験値が少ない相手に対し、自分が物事を優位に進めるための情報を提供し信頼を得る
  2. 相手のプライドや気持ちを傷つけないように、自分持っている情報を先に提供し、相手の反応から仮説を組み立て、検証する。
  3. 部分から全体に視点を広げ、相手の隠れた困りごとを深掘り。痒い所に手が届く行動を取る。

さらに、店員さんの話術で感心したのは、「先に話題を振るけれど、客が話し始めたら聞き役に徹した事」。この「聞き役に徹する」が結構難しいと思います。ありがちなのがお互いに会話だけが盛り上がってしまい、本来の目的を忘れてしまうこと。もし、店員さんと登山談義が弾んだとしたら、私は「お話し面白かったなぁ。」と会話だけで満足してしまい、購買に対する意欲が先送りされてしまったかもしれません。だって、一杯山の事を話して心が満ちてしまったんですもの。

 さて、結果として、私は見事に店員さんの手中にハマりまして?ええ、30,000円以上する靴と、メリノウールのインナーを嬉々として購入した次第です。そしてスキップして帰りましたよ。次に登る山を想像してワクワクしながら。店員さんに火をつけられた感じですね。

 この例は、売り手と買い手という立場なので、売り手が上手に買い手の購買意欲を引き出すことによって、WIN-WINが描けました。では、お互いにニュートラルな関係だったらいかがでしょうか。単なる井戸端会議なら別ですが、目的を持って誰かと会う時、上記の話術は有効に働くと私は思いますし、実感もしています。それは、この手法が、オープンマインドな自分を形成するための1つの技術だからです。自分が何者であるかを見せ、それに対し他の人の意見を否定せずに聞く。多角的視点で物事を捉え考える。 これらは自然に自分もさらけ出せるし、色々な相手の良い所・自分と違ったところを受け入れられるという得な生き方だと思います。もちろんストレスレス。山の頂上で深呼吸をするかの如くすっきりハレバレしていきます。そんなスキルを身に付けたいですね。