役員メッセージ 生きていくTips

かつ便りNo.174 ~心の隙をつく~

 

 みなさま 田中かつゑです。10匹いるニャンコたちですが、各々パートナーが決まっているようです。その中でハチワレ長毛の男の子が彼より4歳程年上のキジトラお姉さんにぞっこんです。けれど、キジトラお姉さんはすげなく…お姉さんにすり寄るハチワレの姿が何とも健気です。

 数年前にいわゆる「ロマンス詐欺」に遭遇したことがあります。今回の記事はその過程と時々の自分の心の動きを書いています。同じような被害に遭いそうになった時、どなたかのご参考になれば…と思います。

 事の発端はあるSNS。そこは一部の人には「転職サイト」として有名で、私自身は自社に転職可能な従業員をスカウト可かどうか検証するために、自分のプロフィールと写真を公開の上、そのサイトを活用しておりました。

 ある日、30歳代位の白人で顔立ちが整った男性から「友達の申請」が届きます。彼のプロフィールを確認すると、「カナダ人。2年前から外資企業の日本支社に勤務中。35歳。趣味はボディービルとスポーツ。片親で、お母さんが祖国におり、お姉さんはディーラー。」と記されていました。そして、「会社以外の人たちと会話をして、日本語をもっと上手になりたい。」が申請理由とも。日本語上達が目的なのに、使用言語が英語だったのには不自然さを少々感じましたが、私も英会話のスキルアップをしたかったので、軽い気持ちで了承しました。その時の私の気持ちは、

【英会話上達の一手段としてチャットしてみようか】

 その後、日に2~3回(多い!)程、英語でのチャットが届きます。内容は
「仕事は大変だけどやりがいがある」
「お母さんは女手一つで自分を育ててくれた」
「お姉さんは仕事に誇りを持っている」
など、彼の周りの状況を紹介してくれます。仕事に真摯な様子や家族思いな感じ、誠実さが伝わって来ます。また年齢が35歳で、出会いを探しているとも。独身だったのですね。

【いい青年なんだなぁ。息子よりちょっとお兄さんか】

 そのうちに、彼の内面(?)を語るようになってきます。
「実は僕には日本に友達がいないんだ」
「毎日が寂しいんだ」
「自分をさらけ出せる人が欲しい」
「甘えたい」
「あなたたは年下の男性は好きですか」
「あなたをもっと知りたいです」
「会いたいです」
「あなたを頼ってもいいですか」

【んんん?雲行きが怪しくなってきた感じが】

 そして、その日もチャットをしていたら、いきなり彼のセミヌード自撮り写真が添付されてきましたよ。鍛え上げた肉体を見せたかったのでしょうか。あいにく興味の対象外なんですが…。

【ちょっとヤバい人かも】

 結果、「間違えた」というメッセージと共に写真は削除されたのですが。絶対わざとだと確信しましたね。この頃から、もしかして詐欺?との疑問が湧くようになります。

 それでも、その後は毎日の出来事や当たり障りのない話題が数週間程続き、本当に写真は誤送だったのかな?と思い始めた時、ブランド品のバッグが5つ並んだ写真が届きます。
「これは姉のいう事を聞いて投資で儲けたお金で母に買ってあげたバッグなんだ」
そうですか。親孝行なんですね。
「本当はあなたに買ってあげたいけど、プレゼントする方法が分からないんだ」
「だから、あなた自身がお金を儲けられるように力を貸したい」
「だってあなたは僕の大事な人だから」
「バッグだけではなく、宝石や時計も気軽に買えるようになるんだ」

【はい、ビンゴ!詐欺決定ですね。ではお手並み拝見と行きましょうか】

 さあ、最初の友達申請からこの下りまで3ヶ月程経っています。どうやら相手がしびれを切らしたようですね。畳みかけが始まりました。
「僕には友達がいないんだ」
「あなたが唯一の心の支えなんだ」
「愛してる」
「僕にはあなたが必要なんだ」
「あなたしか頼る人がいないんだ」
「ずっと一緒にいたい」
「カナダに行こう」 等等々…
そしてとどめの一言が来ました。
「あなたに会ってカナダに行くためにお金が必要なんだ。姉に習って一緒にお金を儲けよう。ちょっとの初期投資で大金持ちになれるんだ。僕を信じて。」

 この時点で申し訳ないのですが、彼をブロックしました。ばかばかしくて付き合ってられない。というのが本音です。実はその後3ヶ月程経って、もう一度彼から友達申請が届いたのですが(もちろん却下)、きっと彼はターゲットをいちいち覚えていないのでしょうね。

 この一連の出来事を振り返ると、心理的隙に付け入る詐欺はこんな思考をしているのであろうと予測しています。〇付数字は私のチャットでの言動です。

①→日本語の力を伸ばしたいという相手と英語でのやり取り
②→彼の家庭環境に同調
③→彼の「友達がいない」発言に同情
・彼の思考予想:(私が)相手に合わせる、同調しやすい、流されやすいタイプ⇒騙しやすい
④→彼のお母さんを「羨ましい」と表現する(もちろん社交辞令です)
⑤→彼のお姉さんを「素晴らしい人」と言う(同上)
・彼の思考予想:(私が)彼を信頼し始めた。さらに、お金や物に対してある程度の欲求を持っている⇒もう一押し
⑥→彼の「あなたは僕の大事な人」とのアプローチに肯定(ありがとうと言っただけだが)
・彼の思考予想:術中にハマった!

 今回は私自身がバーチャルでの人間関係に対して何ら関心を持っていないことと、そもそも私自身が疑り深い性格であったため(これはこれで嫌な人間ですね)、何事もなく済みました。が、本当に優しい人、信じやすい人、純真な人、トラップに引っかかった経験が無い方などにとっては、彼の手段はとても危ないアプローチだと痛感しました。
(カナダ出身の35歳。白人で顔立ちが整った男性。日本語も話せる。性格は誠実で親思い。親族に金持ちがいる環境、って出来過ぎではありませんか(^^;))

 昔と違い、今は様々な出会いの機会がありますし、対面でも易々と人を欺ける人種も存在します。ましてやバーチャルの世界では性別・年齢・生い立ち・性格などいくらでも加工が可能です。

 自分の世界を広げるため、新しいことに挑戦するためなど、生きている限り様々な出会いの場があります。但し、その出会いを有意義なものにするために、是非ご自身の目を研ぎ澄まして欲しいのです。ほんの欠片程の違和感・言葉にはできない気持ち悪さ・何だかわからない疑問など、ご自分のアラームに対する勘を信じて、突き進む前に一度立ち止まって考えてみて欲しいです。