役員メッセージ 生きていくTips

かつ便りNo.187 ~指導に向いている人~

 

 みなさま 田中かつゑです。ああちゃんが虹の橋を渡って一週間。一番彼と仲が良かった仔がやたらと人間の傍にいたがり、甘えてくるようになりました。この仔はああちゃんと、もう会えない事がわかっているのでしょう。ニャンコも寂しい・悲しいという感情は豊かに持っています。人と同じです。

 習い事をしていると、色々な指導者とお会いします。中には、「ん?」と思われる言葉使いをなさったり、私の理解度が低いのか、よくわからない教え方をなさる方もいらっしゃいますが、概ねみなさま、教えるということがお好きな方々だと思います。その中で私が非常に心に残る2名をご紹介いたします。みなさまが、年月を経て後人に指導をする立場になった時、これらがtipsとして役に立つことを願います。

お1人目。着付け教室の講師。

 和装は、一人で美しく着るのには、約30回程の指導が必要と思います。お作法や細かい順番、プロセスがやたらと多く、素人が全てを身体で覚えるのに相応の期間と練習が必要だからです。ある着付け教室は初級・中級・上級と3段階のレッスンがあり、各級の回数は10回程です。ここでは、殆どの講師が同じ教え方をします。指導要綱が決まっているのかもしれませんね。例えばこんな感じです。

初級:「着ることができる」が及第点。美しく、の観点はなし。着崩れ?okの世界。

中級:襦袢・着物・帯などパーツそれぞれを扱う時の注意点や、美しいの入口に入るコツを伝授。

上級:着る人の体型に合わせ、美しく見せるポイントや着崩れしないtipsまで指導。小道具を活用した着方も伝授。

 受け手のレベルに合わせ、徐々にステップアップしていくのですね。ここまでは講師の方々に差はありません。特筆すべきはMさんの教え方。「何故このお作法がまかり通っているのか」を説明した後、「そのため、Xポイントは大事だけど、Yポイントは守らなくても大丈夫」の様な教え方をなさるのです。これは私にとっては眼から鱗。決まっているから、ルールだから、と教える講師たちの中で、唯一着物姿で他の人から注目される箇所はどこなのか、を前提とした着方を教えて下さった方なのです。

 そしてその前提とは…。

「振袖や訪問着など、かしこまった和装を着る場面(例えばお茶会・婚礼等)では、ご婦人は正座や椅子に座っていることが多い。そのため、目立つのが上半身と上前。さらにそれらの場所には模様が施されていることが多く注目を浴びる」。なるほど。だから目立つ所に美しさを集中させるのですね。

 これらを加味した、着付けのポイントは以下と教わりました。 

  1. 和装は上半身の後ろ姿で美しさが決まる。
    襟の後ろ側から背中心までが一直線であること。そして、背中側にしわやたるみが無いこと。
  2. 帯の下となる、腰から裾までの背中心は少々ズレていても大丈夫。  
    直接見えない部分は、乱れていても大丈夫。美しい着付けを保つのに、何本もの腰紐を使うと同時に、ボタンホック、小道具、クリップ等を駆使するけど、見えないから平気よ!内側でそれらがごちゃごちゃになっていても気にしない!ウエストのくぼみですら、カバーする下着が用意されています。なので元の体型が分かりません。
  3. 絹が素材の着物がカチッと決まるためには、プラスチック等の補助道具は必須。
    襟芯、帯板、コーリンベルト、和装ベルトなど、色々ありますよ。重ね襟を付けると、よりゴージャスに。

この方に教わって、私はずいぶんと着物を着ることが楽になりました。

 お2人目、ジムのレッスン講師。

 ジムに通う目的は筋肉アップ・体力向上・ダイエットと人によって異なるとは思いますが、筋肉強化のレッスンを選択する方は、間違いなくその筋肉に何らかの刺激を加えたいとお考えだろうと思います。そんな方に、このレッスン講師は、各運動に対し、どの筋肉がターゲットなのか、正しい姿勢はどうなのか、そして、強度はどうあるべきか等を、嫌と言うほど繰り返し繰り返し教えてくださいます。同時に各運動の名前も一緒に。(例えば、「ワイドスクワットは、足を肩幅よりも広く開きつま先をやや外側に。 姿勢を伸ばしたままゆっくり膝と股関節を曲げてお尻を突き出す、膝は90度に!」など。)

 運動の一つ一つに対し、ずっとこれらを叫び続けてくださるのです。そのため、私たち受講者は何時も鬼軍曹?に睨まれながら、正しい動きをすべく努力をせざるを得なくなり、それはそれは充実かつキッツイレッスンタイムを過ごすことになります。時々、正しくない動きの人がいると、「私を見て~!!!」と檄が飛びます。「もっと腰を落として!!!」「もっとお尻を突き出して!!!」…ああ、講師の雄叫びが脳裏に浮かびます。私はこの講師が大好きで、この方のレッスンは時間が許す限り参加しております。そのせいなのか、覚えの悪い私でも、各運動の正しい姿勢がある程度身に付いてきたように思います。

 この方の凄い所は、受講者が正しい動きを出来るようになるまで、何度でも繰り返して指導をしてくださることと、ご自身もすさまじく勉強熱心な事です。講師の職に就いて10年程とおっしゃっていましたが、情熱は冷めるどころか益々燃え盛り、受講者への指導と共に自らの体力増強に拍車をかけております。

さて、お二人の指導をまとめると、こんな傾向が見えます。

  1. 教える内容とその背景を理解しており、自分の言葉で説明でき、ぶれない
  2. 1:Nでの指導のため、1人1人に寄り添うというより、自分の世界に受講者を引き込んでいく
  3. 実際に行う事だけでなく、効果や出来た後の未来を想像させる指導をする
  4. 同じ事を繰り返し指導し、受講者に覚え込ませる。自らがお手本となる

教える対象が大人数の場合には、上記の指導が有効かと思います。

今は若い方も、年月を重ねると部下や年下の方々に、様々なことを教える立場になるでしょう。対象がN人の場合のマネージの仕方を今から意識していくのも良いと思います。