役員メッセージ その他

かつ便りNo.194 ~言葉と文化の壁~

 

 みなさま 田中かつゑです。急に冷え込んだ今日。ニャンコたちは全員座布団の上で丸くなっています。昨日と比べると気温が10度位低くなったので寒く感じたのでしょうね。一方「天高く猫肥える秋」と言う?様に、食欲は旺盛な彼ら。冬に備えて身体つくっていこうね。

 日本で暮す海外の方々の中には、日本語があまり得意でない方もたくさんいらっしゃいます。私の友人の一人もまさにそうで、こちらに来て4年程経つのですが、日本語での会話は簡単なやり取りが精一杯です。その彼女のこんな困りごとに遭遇して、私はちょっと考え込んでしまいました。

 彼女の住民票表記はもちろんアルファベットです。そのため、海外の方であることは自明です。その彼女に特定健康診査のお知らせ封筒が届きました。封筒の裏表紙には英語・中国語・韓国語、そしてやさしい日本語での説明が記載されているサイトに誘導する、QRコードが載っています。けれど、健康診断そのものの慣習が無い国に育った彼女にとっては、それが何を意味するものなのか、何故お知らせ封筒が自分の元に届いたのかがわかっていませんでした。
けれど、ある年齢に到達した彼女は自分の健康に不安があったのでしょう。「この封筒が届いたのだけど、どうしたらいいの?」と私に相談が来たのです。
そこで、私は彼女に特定健康診査の目的と対象の人が誰なのかを説明した後、二人で封筒の中身を確認しました。見事に日本語だけです。受診票・問診票・健診を受けることが出来る病院の一覧表・健診内容(とオプションとして選べる検査)等…。これらが全て(わかりやすいとは言えない)日本語で書かれています。この分厚い封筒を開けた時、彼女は茫然としたことでしょう。もし私が同じ立場だったら、同じように途方に暮れると思います。念のため、英語が通じる病院を探したのですが、一覧表に載っている病院は全て日本語のみの対応でした。そのため、彼女は予約に始まり、健診時にも勝手がわからないはずです。「申し訳ないけど、健診に付き合ってくれると嬉しい。」と彼女。それはそうでしょう。何をされるのかも分からず、周りは日本語だらの中で受ける健診はかなり無理があると思います。

 またある時は、引っ越しに伴う保証人になってくれとお願いされたこともあります。もちろん快諾しましたが、送ってくれた書類は、みごとに日本人が対象の賃貸契約書。そもそも日本の契約書やお役所の文書は、私たち日本人にも分かりやすいとは言えないかと思うので、彼女に至っては「何これ?」となるでしょう…。契約書の送り主の不動産会社はかなり大手だったのですが、英語のフォームは用意していないとのことなのです。この時は、私自身が不動産業者の担当の方とやり取りをし無事契約は締結できたのですが、さぞかし彼女は不安だったでしょう。

 彼女の戸惑いや困った姿をみていると、もし私が例えばフランスに単身で住んだらどうなのだろうと思う時があります。(何故フランスなのかと言えば、英語も通じない事が多いから。そして私がフランス語もフランスの文化も何も知らないから。)

 前職でパリにある会社のチェアマンをしていたことがあったのですが、その時は現地の駐在人がホテルの手配から護衛、食事からお土産まで全てを仰せつかってくれました。そのお陰で私はお上りさんよろしく、パリ出張をこなすことが出来たのですが、もし一人で何もかもやらなければならないとしたら…?と考えると身震いがします。言葉も通じず地理も不案内、さらに慣習が異なる場所で、快適とはいかないまでも何とか過ごす…想像もつきません。
今はきっと違うのでしょうが、その時点では、日本との違いはこんな感じでした。

  • レストラン。ディナーの開店時間は夜8時です。
  • ホテルに泊まるときはキャッシュカードでのデポジットが常識。
  • 安全な歓楽街から一本道を外れると物騒な場所になるので行ってはいけません。
  • シャンゼリゼ通りは物乞いで溢れています。近寄ってはいけません。
  • 地下鉄に一人で乗ってはいけません。身ぐるみはがされる危険があります。

これらは全て駐在員に教わったことです。知らずにのほほんとしていたら、何かの事件には遭遇していたと思います。現地の状況を分かる人が守ってくれてとても有難かったです。

 改めて、日本で暮している海外の方々で日本語や日本独特の文化・風習・制度に精通していない方々のご苦労を思いました。普段の生活がつつがなく過ごせていても、突発的な病気・ケガや法・制度に関することに直面した場合、多かれ少なかれ日本人のサポートがないと、どうしていいのかわからない方々は沢山いらっしゃると思います。
たまたま彼女の場合は、私が困った時の駆け込み寺として存在することができましたが、そのような日本人の知り合いがいない方々はどうしているのでしょうか。外国の方々のなにかしらのコミュニティで支えあっているのでしょうか。それとも自ら人の輪を広げ、味方を付けているのでしょうか。

 日本人からすると常識として何ら注意を払わないこれらは、疎い方々にとっては高い壁になるのだな、と改めて思いました。
さて、今後私は気がついてしまった、この「壁」の課題にどうやって取り組んで行ったらいいのか。まだ暗中模索です。取り敢えず、身近な彼女のサポートを通じ、具体的な困ったを判ることからですね。