役員メッセージ

かつ便りNo.87 ~主張と譲歩~

 

 みなさま 田中かつゑです。コーヒーの香りに敏感な仔がいます。彼は、私がコーヒーを飲んでくつろいでいると、わざわざマグカップの匂いをクンクンと確認し、砂掛けのしぐさをするのです。嫌いなんだよね?何故わざわざ嗅ぎに来るの?

 今は令和ですが、時々昭和にドップリと漬かったような方とお話する事があります。価値観は人それぞれなのですが、その価値観を他の人にも押し付けるのはどうかと思い、したためます。お読み頂いた方々はどんな感想を持つのでしょうか。

 その方は家事育児は女性の仕事と固く信じています。さらに、ご自身のパートナーは鋼の肉体と精神を備えていると信じ切っています。そのため、パートナーが体調を崩しても分かりません。横になって休んでいる彼女に対して、「俺のご飯は?」と何の邪気もなく問いかけます。

 一方、女性の方も同様に、自分の本望は男性を支える事だと思い込んでおり、それはかいがいしくお世話をしています。少々体調がすぐれなくとも、しんどくてもおくびにも出さず家事に精を出します。

 このお二人がそのままの状態でいるときには何の問題もなかったのですが、「老い」という時間の刃がそろそろと二人を傷つけていきます。男性は考え方が益々頑なになり、自己主張が激しくなります。女性の方は体力も衰え、今までのように闊達に行動できなくなって来ました。さらに二人ともちょっとした物忘れをするようになり、生活がぎくしゃくしてきます。

 私は男性の方とお話をさせていただいたのですが、パートナーの女性に対してかなりご不満なようです。曰く、家事がおろそかになった、気が利かなくなった、小言が増えた…そして、「昔は良いパートナーだったのに。」 (それ、言っちゃダメですよ……百倍返しが来ちゃいますよ…)

 彼に今更家事を手伝ったら?等という気はありません。不毛ですから。ただ、何故パートナーである女性がそのようになったのか、ご不満の前に彼女の日常や体調を観察して欲しいな、そして思いやって欲しいなとお節介ながら感じてしまうのです。私自身も還暦を目の前にして、体力の衰えを感じています。何より無理ができなくなりました。ちょっと前ならマルチタスクで出来ていたことも、今は一つずつです。やろうと思っていたこともしょっちゅう忘れるし、そんな自分にイラついたりしています。もし、彼女が私のような状態だったら、自分がやっていることで多分精一杯なのでしょう。そこに横やりを入れられたり、自分がやる仕事を増やされたとしたら(例えば、洗い物が終わった時に、新しい汚れた食器を差し出される、片付けが終わった時に汚される等、細かい事ですが。)人格者じゃないですもの、むっとしますよね。

 ご自分の価値観や相手に対しての期待にはその人なりの基準がおありでしょう。そして、その方が理想とする日常生活を100%送りたいのであれば、全てご自分でなされば良いのではと思います。あるいは家事代行サービス等をご利用する手段もあります。そうではなくて、ご自身とパートナーの二者で今後も老いと仲良くしながら支え合って暮らしていこうと考えているのであれば、お互いに出来る事と譲れない事を小まめに話し合い、譲歩し合って生きていくことが最善策なのではないかと考えるのです。

 主張はすべきと思います。ただ、独りよがりや相手の心情・体力・好き嫌い等を無視し、ご自分だけが悦に入っているのであれば、それは単なる我儘です。相手方はいつか爆発するか、静かに去っていくか、文字通り病気になってしまうかもしれません。その時に一番困るのは、他でもないご自分の我だけを通していた方です。パートナーのため、ご自分のため、思いやりを形に行動に表してはいかがでしょうか。