役員メッセージ 生きていくTips

かつ便りNo.147 ~慣れと模倣と学習~

 

 みなさま 田中かつゑです。ニャンコの水飲みですが、ケージ取付用の給水器とお椀の2種類を用意しています。ある1匹がケージ取付の方が大好きで、とうとう給水器の前でお昼寝をするようになりました。独り占めしたいのかな?それとも給水器を(何かから)守っているのかな?

 仕事・人間関係の構築・趣味などの習い事で、まるっきり勘所が働かない状態で始めなくてはならなかったら、みなさまはどのような思考・行動を取るのでしょうか。今回はずっと野良として暮らしてきていた我が家の新参ニャンコが家猫に変身する過程と私たちの仕事を対比させていってみます。例として、私たちが未経験分野の仕事に携わることになったと仮定します。例えば技術畑一本だった理系の方が営業部署に配置転換になった等の場合です。

 今まで広い空間で何の制約もなく行きたいところに行けたニャンコがお家の中に。さあ、大変です。彼女は推定2歳の時に我が家に捕らわれの身となりました。自由を奪われた対価は規則正しく食べられる美味しいご飯と温かいベッド。そして人の愛情。ただ、彼女は最後の愛情というものが何か、がまるで分りません。彼女から見たら人とは、自分に危害を与え、石を投げ、頭や身体を攻撃してくる対象に過ぎなかったため、その恐ろしい人、が毎回ご飯をくれても、優しく話しかけてくれても警戒心が解けることはないのです。それに加え、人の生活で発生する音、掃除機・エアコン・洗濯機、果てはドアの開け閉めまでも、彼女にとっては未知の音。怖くて仕方がありません。その頃の彼女はひたすら新しい環境が怖い、怖い。それだけでした。ずっと助けて!と叫んでいた記憶があります。夜は、ここから出して!自由にして!!と悲痛な鳴き声。私たちが初見で何をしていいのかさっぱり分からない場所で呆然とするのと一緒ですね。さすがに私たちは最初から大っぴらに泣き叫んだりはしませんが。

 しかし、彼女は生きる、という立派な目標を持っています。そのため、怖がってばかりはいられません。さて、次に彼女がどんな行動を取ったのか。「観察」です。じっと、ただただじっと先住猫たちの様子を凝視しています。人からご飯を貰う時・トイレに行く時・人に何かを要求する時・掃除機が近くに来たらどうしたら良いのか・様々な知らない音は凶器なのか無視してもいいのか、などなど。部屋の隅にじっとうずくまり(自分にとって安全な位置を確保しつつ)先住猫2匹の所作をつぶさに観察し、覚えようとしています。私たちで言うと、その場所の古参やベテランの方に質問しまくる、または情報収集のプロセスでしょうか。ここで感情の切り替えが上手く出来るといいですね。恐れ慄く時間が長いと、心がしんどいままですから。

 時が過ぎ、ここ(人と一緒に暮らすこと)が安全だと理解したのか、彼女は適応の段階に入ります。観察した様々な情報から、マネできることをやってみるようになりました。
トイレの時のポーズはこうしよう。
あのニャンコは優しいから甘えよう。
掃除機は自分を攻撃しない。
怖いと思った時の隠れる場所はここ。
人は叩いたり蹴ったりしない、むしろ撫でてくれる(まだ怖いけど)。
と、一つ一つ先住猫たちの所作を真似し、繰り返すことで自分のスキルとして体得していきます(猫トイレの縁に両前足を引っ掻けて、上手に使うのを見た時には感心しました)。
そしてもう一つ賢いなぁと思う事。彼女は自分を守り、導いてくれる「先生猫」を指名し、ずっとその先生にぴったりと寄り添うになったのです。先生に指名されたニャンコも頼られると悪い気がしないのでしょう。「人に甘えるときはこうするのよ。」(と、彼女の前で私に向かってゴロンとお腹を出す)、「ご飯が欲しい時はこんな鳴き声をするのよ」(甘ったるい声で鳴く)など、個人授業です。これは、私たちが新しい事に挑戦する時ベテランの方を敬い、色々ご指導願いつつ自分でも出来るテリトリを広げることと正に一緒ですね。この段階でベテランの方のスキル・ノウハウをがっちり学んで、失敗も恐れず前に進む心構えを屈強にしましょう。

 さて、ここまで来ると、あとは彼女の個性を取り入れ、彼女なりの人との関わり方を形成していくモードとなります。他のニャンコの所作も観察しながら、人に甘えるタイミング、効果的な甘え方や鳴き方(甘える時の声が可愛い事!)、可愛がってもらった時の感情の表し方も独特です(彼女はメトロノームのように尻尾を振ります。10センチほどの真っすぐな尻尾をブンブンブン…と規則正しく振ってくれます)。私たちがベテランから色々なスキルを伝授して頂きながら、自分の経験からアレンジできるもの、活用できることを引っ張り出し、それらに自分の発見や個性を加え、自らの価値をしっかりと示せるように頑張っていく事と同じなんですね。そしてわかってくること、出来る事の骨子が仕上がってくると、そこからは教えを乞うよりも自分で創造していく自走が始まります。やっと周りのみなさまにご迷惑をお掛けすることなく、そのチームの一員として価値を生み出せる存在になった自覚ができます。周りの方々への恩返しの期間ですね。

 そして、もう一つ発見したことがあるのですが…ニャンコも(多分ワンコも)悩むのであろうということ。何故なら、結構try and errorを繰り返すんです。例えば彼女の行動。昨日は竹馬の友の様に親密にしてくれたのに、今日はよそよそしかったり、先日は頭を撫でると喜んだのに、今日は「何すんのよ!」と怒ったり。おそらく人との距離の縮め方を考えながら行動しているんだな、と思います。そんなこんなで彼女(この仔はNo.7のミミです)の最後のハードルは「人に抱っこされること」に絞られるようになりました。彼女はまだまだ抱っこされると身体が硬直するんです。頑張ってハードル越えようね。このフェーズまで3年近くが経過しています。それだけ慎重な仔なのでしょう。

 けれど私たち人が新しい仕事に臨む場合、上司に当たる人は概ね3ヶ月でその人が力を発揮できる人財かどうかを判断する傾向があるように思われます。完璧に対応し出来る、ではなく出来るポテンシャルが備わっているのか、そしてそこに向かって努力しているかを冷静に見ています。戸惑い・焦り・恐怖・混乱は誰にでも付いて回ります。ただただ、それらの負の感情を自分自身で受け止め、どうしたら正の感情に変換できるのか、を必死に考えつつ身体を動かして欲しいと思います。
30年以上昔の私にもこのブログを読ませたいです。