役員メッセージ ちょっと苦しい時に読んでみて

かつ便りNo.85 ~逆境の時~

 みなさま 田中かつゑです。水を飲むときに、何故か自分の手ですくって飲む(?)仔がいます。素直に普通に飲んだ方が早いし良いと思うんですが。ベチャベチャに濡れた前足を拭いてあげるのはいつも私。あぁ、手間かかる…ん?わざと???

 仕事でもプライベートでも、攻めの状態はみなさま活き活きとしてらっしゃいます。アイディアに溢れ、物事を前向きに捉え、人によっては猪突猛進なんて方も。一方で不利な状態になった時、みなさまはいかがでしょう。どんな考えをし、行動取るのでしょうか。

 ①逃げる:自分では持ちこたえられないので、他の人(上司・権力を持った人・その他の誰か)に加担してもらい、自分では守ることに対して踏ん張らない。

 ②耐える・おもねる:時が解決してくれるのをじっと待ち、嵐が過ぎ去ることを祈る。または巻かれる。

 ③戦う:形は様々ですが、「揚げ足を取る」「隙を伺う」「相手側に不利な情報を集め巻き返す」等

 どんな手段を取っても、その人にとってはかなり苦しい時間を過ごすことになると思います。できれば、苦しい期間は早く過ぎ去って欲しいですよね。以下は逆境の最中を経験した友人の息子さんとそのおかあさまのお話です。ちょっとお付き合いください。

 息子さん(Aくんとします)はサッカーが大好きで、小学校の時からサッカークラブに所属し、当然中学校でもクラブ活動はサッカーを選びました。ところがそのクラブ内で困った問題が発生します。ポジション争いの延長で、Aくんは上級生から目をつけられ、練習の度に(顧問の先生に分からないように)タックルや足首への集中攻撃を受けるようになったのです。段々とAくんは練習に行くのが辛くなり、クラブを辞めようかと思い始めます。けれどサッカー自体は好きでしたから、何とか穏便に済ませようとして、上級生に気に入られるように下働きを率先したり、試合の時は荷物持ちに立候補したりと、彼なりに思い付ける手立ては講じたようです。けれど無理をしている彼の心は悲鳴を上げ始め、逃げ道を欲します。そして彼が取った行動は散財でした。もちろん中学生が大金を所持しているはずはありません。彼はAくん母の財布からお札を抜き取り、それでゲームを買っていたのです。合計20万程でしょうか。

 このことに気が付いたAくん母はある行動を取りました。彼女はお財布からお金を取ったAくんの行動を責めることはせず、今のAくんの心の状態を紐解いていき、彼の悔しさ・憤りを理解すると、こう確認したのです。それは「自分が孤立無援になってもサッカーを続けていきたいか」、つまり上級生を打ち負かすことが出来るようになるまで練習を重ね、実力でのし上がろうとする覚悟はあるのか、を確認したのです。

 上のパターンだと、②に耐えられなくなったAくんに③は選択肢としてあるかどうかを問うたのですね。答えはNoでした。多分Aくんはもう疲れきっていたのだと思います。

 Aくん母が学校に出向いたのはその数日後。資料を携え、担任とクラブ顧問にこんなプレゼンを実施したのです。

  • 逆境となった息子の置かれた状況(先輩からひどい仕打ちに合っていると本人が認識している事)
  • 環境(1年生なので先輩に逆らえない事、先生に言いつけたら仕返しされると脅されている事)
  • 性格(弱みを人に見せたくない心が働いている事)
  • 時間(このまま上級生が引退するまで②の手段を取ることは本人の精神を蝕むことである)

 そして、結びとして「A家としては諸事情にてこれ以上Aにサッカーを続けさせてあげることが困難となりました。ご了承いただきたく。」と。

 Aくんが自分で辞めたいと(つまり逃げた)のではなく、あくまでも家の都合での退部に持って行ったわけです。

 過保護、かもしれません。もしかすると、Aくんはもっと頑張りたかったのかもしれません。またいじめも長くは続かなかったのかもしれません。しかし、Aくん母は私にこう言いました。「逆境に合ったら①逃げる、②耐えるまたは従う、③戦うの3択しかないの。Aの立場では②③はあり得なかった。だから①しかないのよ。」

 Aくんを知っている私から見てもおかあさまのご判断は正しかったと思います。四面楚歌で心が委縮している状態では自分からアラームをあげることは非常に難しいことです。しかも上級生から脅されている状態では学校の中で相談する人もいなかったと思われます。行き所のない心が散財へと走ったのでしょう。

 この一件にはオマケがあって、彼女のプレゼン資料がとても理路整然として素晴らしかった様で、後にその学校で道徳(?)の教材に使われたそうです。

 あなただったら、どうしますか?

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