テクニカル

経験を積むこと 2

前回、経験を積むことについて、漠然と業務をこなすだけではなく日ごろから意識して取り組むことが重要だという話をした。今回はそれをもう少し掘り下げたいと思う。

あらためて「経験」とはどういう意味だろうか?
一般的には「何かを成功に導くためのノウハウを、体験を通して得ること」と理解されるが、それだけでは無さそうだ。

初めての事を試みようとした際、最初から上手くいくことはあまりない。何度も失敗したり、工夫することで、ようやく「成功」にたどりつくのが常である。
言い換えると、「経験」することで「成功ノウハウ」「失敗ノウハウ」「工夫するノウハウ」をセットで身につけられるのだ。

誰しも当然、何か業務をしたのであればそこから知識や技能を身につけたいと思うだろう。
では、日常の作業を通して「やったことを経験に変えるため」に必要なことは何だろうか。

ひとつは「自分の頭で考えること」である。
ただ言われたまま作業をしているだけでは、学ぶものは少なくなる。
同じ業務をしていても「目的は何か」「誰に対してのものなのか」「工夫できるところはないだろうか」と頭を使うだけで連鎖的に考えることが増え、見える世界は変わっていく。

難しい話ではない。マラソンをするとなった時、「走れ」と言われたらあなたはとりあえず走り出すだろうか?よほど元気が有り余っていない限りそんなことはないだろう。
「距離はどれくらいか」「ゴールはどこか」「コースは」「目標タイムは」などと聞きたいことが色々出てくるはずだ。仕事でも同じように取り組めばよいだけである。

ひとつ言っておくとすれば、すぐに答えを求めず、一度自分で考えるというフェーズを踏んでほしい。
ググれば答えが得られる時代ではあるが、それでは考える力は身につかない。検索ボタンを押す前に立ち止まって自分なりの意見や仮説を考えてほしい。

ふたつめは「振り返り」。
これも「考える」の一種ではあるが、やりっぱなしにせずに、終わった後に振り返るのが有効であると思う。

振り返りはよく反省と混同される。
反省は自分の行為をかえりみる、つまり過去のことを考えている。「仕事でミスをした、自分が悪かった」――これが反省だ。自分ができなかったことに焦点が当たりやすく、そこから改善点を考えても「頑張りが足りないから」「努力が足りなかったから」「やる気がなかったから」といった精神論の結論になりがちである。
対して振り返りは「仕事でミスをした、次からはチェックシートを作ってミスのないようにしよう」と、事実を客観的に捉え、次の行動を考えることを指す。こうすることで、明らかに「考えることによる効果」が長期的には出て来るのだ。

さて、次回はさらに踏み込んだ話をしたい。お付き合い頂けると幸いである。